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殴り応えのある金玉さんから頂きました

2019年3月20日
 胸が重たい。鉛のように胸が重たい。自然と体が前傾して喉が詰まるようだ。息がし辛い。苦しい。 雲ひとつない晴天の昼下がり、僕は暗い顔で歩いていた。  17時間の夜勤を終えると大体昼前くらいに帰路に着くことになるんですけど、いつも気分が重たいんです。 もうね、ベッド下に敷かれた踏み込むとナースコールが鳴る仕組みの悪魔のアイテムでもって狂ったババアに10分おきに50mほど歩かされたりするんですけど、ババアに要求を聞くと常に「トイレに行きたい」としか言わないんです。10分前にも行ってるのに。その10分後にも起きだしてきて「トイレに行きたい」。なんなの、筋トレなの? って話ですよ。そのババアと同じような行動をする狂気の仲間が5人くらいいまして、そいつらが結託して何分かおきの波状攻撃を10時間くらいしかけてくるんですよね。トイレに何があるんだババア。中にはトイレとも言わないやつとかいるからね。寝ている状態で人差し指を顔の前からすっと足元のほうへ指して「戻りたい」とかいうやつとかいるからね。意味がわからない。僕だって戻れるもんなら戻りたいわそんなもん。  毎夜毎夜こうですから、こんなもん合法的に人間を壊す方法を実験しているとしか思えない。どれだけの負荷を与えたら人間が壊れるのか、学園モノのエロゲーで学園長が上物の女学生を調教をして裏社会で売り飛ばすという闇のビジネスをやっていて、そこに表の顔は教師だけど実は闇の調教師で学園長の依頼を受けて女学生を調教するためにやってきた主人公みたいな顔したやつが実験しているとしか思えない。 「ほらほら委員長! しっかり腕立てをしないと顔の前のうんこどんぶりに頭を突っ込んじゃいますよ!」 「ううっ……もうだめっ! もう腕立てできないっ!」 「あははははっ! あれだけ強がっておいて情けないなあ委員長は!」 「ううっ! く、くさいっ!」 みたいな狂気の調教をしている主人公みたいな顔したやつが裏で糸を引いているとしか思えない。  そんな17時間の狂ったカーニバルから開放されるわけですから、もっと晴れ晴れとした、解き放たれた心持になっていても良さそうなもんなんですけど、どうにもこうにも心が晴れない。さわやかな気分になれない。  そんな折に会社で健康診断がありまして、こんな狂った実験室のような会社でも健康診断はあるわけでして、事前の問診表のチェックシートを記入していたんですよ。まあこんなチェックシートなんて心底どうでも良いような質問ばかりでして、「既往はあるか」「飲酒は1日何合か」「タバコは1日何本吸うのか」「人と比べて歩く速さはどうか」とか、もう心からどうでもいい。別に君も興味ないでしょ? 放っておいてくれよと言いたくなる。それが健康診断なんだよって話ですけど。そんなインドにおける卵の平均価格よりもどうでもいいチェックシートを記入していってたんですけど、「症状」みたいな欄の中に「イライラする・不安である・気持ちが重たい」ていう項目があったんです。これはもうそうじゃないですか。そうとしか言えないじゃないですか。まあ正直こんないい歳したオッサンが「イライラして不安なんでしゅうぅん」とかほざくのもかなりキツイものがあるんですけど、ビシッとチェックを入れてですね、健康診断に臨んだわけですよ。体重身長測定やら地獄の血液検査やらを終えてですね、ていうかすごい疑問なんですけど、看護師ってなんであんなに採血するのもされるのも好きなんすかね。僕は自分の血液がシリンジに吸い込まれていくのを見てると血液と一緒に意識まで、魂まで持ってかれる感じで気を失うんですけど、あいつらすげーガン見するじゃないですか。そこまで見なくても良さそうなもんなのになんなんだろ。技術評価みたいなのしてるんですかね。武士の立会いみたいなもんなんですかね。すげー脱線しましたけどまあ色々終えまして、ドクターの問診となったわけですよ。まあこんな健康診断の問診なんて、会社側も医者側もやりましたって事実が必要なだけであって、四万十川の清流のようにサラッと流されて終わりなんですよね。この担当の医者も、医者というよりはさながら工場のライン工のように手早く心音肺音なんかを聞いて問診表眺めて「んーこのイライラするなんてのは皆書いてるからねえ。何か趣味でもして気を紛らわしてください。じゃ、おつかれっした」ですからね。ていうか僕常々思うんですけど、「皆がんばってるから」「皆辛いんだから」とか 「皆そうだから」なんてのは何の言い訳にも励ましにも釈明にもなってないと思うんですよ。 「いやーもうほんと風邪で辛くて休ませてください」 「うん、みんな風邪で辛いからがんばろ」 「イライラして不安があって辛いんです。リストカットとかしちゃって。練炭と荒縄も買っちゃった」 「うん、みんなカットしてるし買ってるからがんばろ」 「ぴぎぃっ! イキしゅぎてバカになっちゃう! もうイかせないでくだしゃいぃっ! おおおおおっ!!」 「うん、みんなイッてるからがんばろ」 意味がわからないじゃないですか。みんながそうだからって自分の辛さが軽減するわけじゃないじゃないですか。みんなイッてるからがんばろなんて、この後調教に成功した主人公が女学生をはべらせるシーンしか想像できないじゃないですか。まあそんなことをこんなライン工の流しドクターに言った所でどうしようもないんで、「ありっしたー」とか言って出てきましたけど。  ただまあこの医者の言ってることも正直理解できて、自分の部屋を掃除とかしている時はわりかし楽なんですよね。無心になれるというか。特に玄関の掃き掃除なんて最高。チリまで残さず掃きまくっていると何も考えなくて済むんですよ。ただ夜勤明けに自分がチリみたいな感じになってるときに掃除をするっていうのも辛いものがある。じゃあほかに趣味は何かなんて考えてみても特になにもなくて、やっぱりもう酒を飲むくらいしかないんですよね。赤霧島とかをズルッと飲むしかない。でも最近独りで酒を飲んでいてもやっぱり気分が晴れなかったりするんですよ。酔ってくるにつれて誰かと話をしたい。誰かと繋がりたいという気持ちがでてくる。しかし僕はそもそも友達なんてかなり少ない上に、マトモな人間なら勤労に勤しんでいる真昼間から飲んでるわけで、話相手なんていやしない。寂しい、飲む、さらに寂しいという完全に負の連鎖、間違いなく良くない酒の飲み方をしてるわけです。もう寝るしかない。  そんなときにふとスカイプの掲示板を使えば友達ができる! みたいな記事を発見してですね、まあその記事では普通に友達申請とかしてもほぼシカトされるか辛らつに扱われるみたいなことが書いてあったんですけど、スカイプならインストールしてあるし、シカトは辛いけどまあ罵倒されても暇がつぶせるならいいかと思ってブリッとその掲示板とやらを覗きにいってみたわけですよ。  そしたらまあなんかすごい魑魅魍魎の巣窟みたいになってまして「鬱病です! イチャイチャしたい!」とか「イケメンボイスで添い寝して!」とか「脳イキ!」とかもうわけのわからないワードが踊り狂ってるんです。脳イキとか普通に出てくる意味がわからない。まあこの文章もイキしゅぎてバカになっちゃう! とかわけのわからないこと言ってるんで他人のこと言えないわけですけど。そんでまあ手当たり次第にですね「僕もイチャイチャしたい!」とか「一緒に酩酊してゲロ吐いてそのゲロの上を滑りたい!」「おおんっ! 脳イキいぃっ!」とかブリブリ送ってみたんですけどまあシカトですわ。なんだ、自分は狂ってても狂人の相手はしたくねえってか。  そんな中で「女装趣味です。チャットで相談に乗ってください」みたいな比較的ノーマルな投稿があってですね、そこ女装趣味ってカミングアウト必要なのかなとは思うんですけど、まあサバンナでヒョウとかチーターとかが闊歩してるなかでシマウマ程度の危険度が少なそうな人がいたんで「酩酊してますけど相談乗ります!」とか僕も割かしあたりさわりなくメッセージを送ってみたんです。そしたら「よろしくお願いします」みたいな厳かな返信がきましてちょっとキョドッたんですけど、まあ身近な人には言えない相談なんだろうなと思ってちょっと真面目に返信しようかなと座りなおしたりしてたんです。赤霧は飲んでますけど。したらなんか「スカイプに霊視できるって人がいてみてもらったんです」とかいう予想だにしない展開なんですよ。はあ、霊視ですか。 「そしたら何か憑いてるって言われました」 「おー、なんすか、悪霊的なやつですか」 「みたいです」  もうね、言っちゃ悪いですけど、こちとら霊感とか全くないわけですよ。高校生の頃実家が友達の溜り場になってて、そこでパリピ的にウェイウェイ騒いで写真バシバシとってたら押入れの襖に普通に人面が映りこんでたけど何も感じないレベルで霊感がないんですよ。そんな僕に何を相談してくれてるんだと。ていうか募集の時点でそういう人を募集しろと。人類がみんな霊視できる前提になるなと。 「写真を送ったら股の間にいるって言われました」  なんだそれ。すげーシュールじゃねーか。 「その写真見せてもらっても良いですか? 霊とか全然僕見えないですけど」 「お願いします」  で写真が送られてきたんですけど、なんだろう、普通にね、股。人間の股。 「霊いますか?」 ってだから霊見えないって言ってんだろ。もうね、このことで相談してくるってことはこの人は霊がいるかどうかで不安を感じているわけであって、もう完全にわけわかんないですけど安心させてあげればいいのかなってことで 「あえて言いますけど、いないっすね」 ってズバっと言い放ったんです。「地獄へ落ちるわよ!」張りに言い放ったんです。そしたら 「ありがとうございました」 いや、いいんですけど、何の解決にもなってない。こっちとしてもさして酒も進まなかったわ。  そんな感じで会話が終わりまして、ううん、消化不良感あるわあと思ってYouTubeとか見ながら酒飲んでもっかいその掲示板見たら、その人完全に同じ文面で相談に乗ってくれる人募集してたからね。僕完全に役立たずだったからね。  結局友達もできず、胸の重さも何も解決されずですわ。もう寝るしかない。酩酊して寝るしかない。いいんだ。明日は玄関の掃き掃除で無心になるんだ。
2019年3月18日
 基本的になんですけど、僕人と関わるのが苦手なんですよ。人見知りなのかなとは思うんですけど、ウィキペディアによると大人でいう人見知りってのは「恥ずかしがりや」「内気」「はにかみや」であり、社会心理学的にはシャイネスというものに分類されるそうです。ある心理学者によるとそれは「他者が存在することによって生じる不快感と抑制」というものなんだとか。  そうなのかなと自分を振り返ってみると、僕は恥ずかしがりやってこともないですし、内気かというとまあイケメンとかを目の前にするとやだ……カッコイイん……となって目を合わせられないとかはありますけどそれほどでもない。はにかみやに至ってはもうよくわからない。なんだはにかみやって。笑うとえくぼができる人のことか? 全然わかんねえ。  てことから考えると、僕は人見知りというかですね、老人が嫌いなんでしょうね。老人が存在することによって生じる不快感と抑制なんでしょうね。なんでかっていうともう簡単で、職場に行くともうテンションがダダ下がるんですよね。仕事が完全に老人と関わることしかないんですけど、もう駄目。出勤すると胸と腹が重たくなって、イライラして情緒不安定になる。首とか肘の内側の関節がかゆくなって眼鏡になんかよくわからない細かいゴミがついてハゲて足が短くなる。もう最悪。ほんと60歳以上の人間と関わりたくない。  この間なんてもうほんとめっちゃ体調悪くてですね、胃がキリキリキリキリキリキリキリキリして肺が鉛に変わってんじゃねえかってくらい胸が重くて、気持ち悪くて吐き気がする。ああもう本当嫌だなーと思いながら働いてたんですよ。休憩時間になってもメシを食べる気にもならず、ていうかそもそも休憩時間も確保できないもんですからタバコだけ吸ってメシは同僚にあげたりしてはやくこの職場から逃げたいとだけ考えて仕事をしていたんですけど、そんな様子を見たゴーレムによく似た、動く石像みたいな顔をした上司がですね「帰っていいぞ」と。おやこれはどういう風の吹き回しだろうと思ったんですよ。うちの職場はもうドラクエ5の主人公が謎の教団で体験したかこくなどれいのひび並みの待遇でして、どんなに体調が悪くても熱が37.5℃以上に達しない限りは休みを許可されないことで有名なんですよ。頭痛がする、だるくて動けない、でも熱は36.5℃だよね! いけるいける! 大丈夫! とか瞳孔が開いた目で言われることで有名なんですよ。そんな奴隷を統括する首長みたいなゴーレムが、たかが胃が痛くて吐き気がするくらいで「帰っていい」なんてどういうことだと。ついに脳みそまで岩石になったのかと。そのうち動かない石像になるのかなと。そうしたら大きな古時計の一節を変えて今はもう動かない大きな石像って歌にしてやるぞと。そう思ってキョドっていたらですね「ノロウイルスの検査をしてから帰れよ」と。  ああなるほど、お前は病原菌を撒き散らす汚物の可能性があるぞと。お前がいると老人にウイルスが移るかもしれないだろとりあえず検査して目障りだから今日のところは帰れってことですね。確かに老人ってやつはやれ室温を何度に保てだの湿度を何%にしろだの1日何カロリーを取れだの熱帯魚みたいな生活を提供してやらないといけない生き物なので、そんな脆弱な生物に対して僕のようなバイオハザードがいたら一気に死滅しちゃうだろってことですね。小学校のときに夏祭りでとってきた金魚を学校の水槽に入れたら全滅させちゃったN君を思い出したわ。  ああはいはいわかりましたわ。もう帰れるならなんでもいいですわとばかりにウンコを採取して検査機関に送付してさーもう帰ろうとしたら職場の看護師に呼び止められて「ウンコだと検査結果夜になるからとりあえずこの簡易検査キットでもう一回調べてみて」って言われたんです。別に夜になってもいいじゃねえかと思ったんですけど、ああもういいっすよ何でもやりますよって話聞いてたんですけどね、なにやら棒状のものをアナルに突き刺して直腸内に菌がいるかどうかを判別するらしいんですよ。なんかあれですよね。医療に従事する人ってのはなんかこう、普通に生活してたら「エッ」てなることをサラッと要求してきますよね。正直インフルエンザ検査で鼻の穴に棒突っ込むのもどうかと思いますし、昔ソケイ付近にできたアテロームの治療のときも「うーん、切っちゃおうか!」とかほんと「今日は外食しちゃお!」みたいなノリで言われましたし。でももうしょうがないんでわかりましたってその棒をもらったんですけどね、なんていうかね、あれですよ。細いコップとか長めの水筒とかを洗う用の棒の先にタワシみたいのがついたアイテムあるじゃないですか。あれみたいなやつを渡してきたんですよ。先っちょがめっちゃタワシなんですよ。思わず「えっ、これケツに入るんすか?」って聞いちゃったんですけど、看護師のほうが「えっ、何言っちゃってんの?」みたいな顔してきたからね。「えっ、アナル拡張済みじゃないの?」みたいな顔してきたからね。「紫色の50cmくらいのこけしみたいなの持ってるよね」みたいな。どういうことやねん。  もうしょうがないんでトイレに入って、一応確認のためにそのタワシの先端を触ってみたんですよ。いやタワシみたいに見えて実はすげー柔らかかったりしないのかなって。猫の毛みたいに、硬いどころかむしろ柔らかすぎて気持ちいい! みたいなことないかなって。うん、完全にタワシ。いやーありえないわーこんなもんケツに入らないわーあの看護師ヤマジュン作品見すぎだわー男のケツなんてなんでもズニュル! って入ってうああおおおっ!ってなるんでしょーとか思ってるわ絶対ー。そんでやっぱアナルにあてがっただけでチクチク感満載でイッタイイッタイだわー。  まあでも入れました。入れましたよ。入れる瞬間「うううおおあああっ!」って嘶きながら入れましたよ。そんで出すときも「おおおおんんああっ!」ってなりましたよ。しかももうどうでもいいんですけど、そのキットを使用後に入れるやつが透明っていうね。完全に僕の直腸内の色を同僚の看護師に見られるっていう羞恥プレイ付き。ほんとありえない。はにかむしかない。僕がゲンナリしてたらその看護師も「まあノロじゃないと思うし大丈夫だと思うから帰っていいよ」って言ってくれたんでもう逃げるように帰りましたわ。ていうか大丈夫だと思うならそこまでやらせるんじゃないよって話だよ。  そんで家に帰って「汚されちゃった……」って不貞寝してたらですね、ゴーレムから「陽性です」って電話が着たからね。なんやねん陽性ですってカノジョかお前はと。いやまあ確かにズルズルズルズルと下痢をしているなあとは思っていたんですけどまさか本当にノロウイルスだとは思わなかった。検便キットからの情報なんで間違いないと。5日間程休んでくれと。ウンコが固まったら連絡くれと。もうめっちゃ喜んだよね。5日も休めるの!? ずっとノロでいたい! ずっと下痢したい! と思っちゃったよね。でも看護師は多分違うっていってたけど、あのタワシキットでの結果も陽性だったのか聞いたんですよ。したらなんか「いや、あれは陰性だった。ていうかキットを間違ってたからそもそもよくわからなかった」とかほざくの。いやいやいや、キットを間違ってたじゃないんだよ。タワシだよタワシ。タワシをケツに入れたんだよこっちは。ふざけんじゃないよ。下痢もらすかと思ったわ。  やっぱ人見知りだわ。他者が存在すると不快感しかないわ。